Field Recording:
Emerging at Tau Art Gallery
September 10 2021
"迴" (ホイ) という謎のエンティティーについての研究は、1960年代から学者たちが提唱していたサウンドスケープ研究と、後ほど音楽家からのアプローチである環境音楽の裏側に潜んでいた。世間に知られずに研究し続けてきたが、迴の複雑な生態及び技術の制限によって、迴にまつわる数多くの謎を解明できず、研究に霧がかかっていた。過去の1年間、私は昔からの研究資料を収集、整理をして、今の盛んだデジタル技術と環境のおかげで迴に関する新しい研究を進めてきた。それらのリサーチ資料、歴史、フィールドレコーディングなどありとあらゆるデータをこのサイトでアーカイブしていく予定である。
このエマージングのために過去の半年間ずっと実験を繰り返していた。場所はtauのアート・ギャラリーを選定、自然豊かなところでありつつ、大学の中でwi-fiなどのデジタル環境も備えて迴の研究にふさわしい場所だ。しかし、実験はうまくいかなかった。最初に、私はこれまでに残されたᏗᎷᏰᎥᎥᏋᏁᏖ音楽の録音とノーテーションを整理し、新しく迴と接触できる音楽のシステム化(prototype⁰¹)を行っていた。それは、リニアかつシークエンス化したノーテーションから音を生成するシステムを設置することで迴とセッション=会話しようという構造だったが、返ってきた迴のシグナルは僅かなものだった。
その挫折を経て、システムを基本から考え直してみた。迴の生態(archive 01参照)はそもそも単なる昔の録音や記録からなるnotationから生成した音楽では再現性がないということに気づいた。地理学的な要素、場所の環境と空気、デジタル環境も含め新しいモデルとプラグインを導入し(chang² alpha)、九月十日の実験でようやく迴のシグナルと姿の断片を確認した。当時の映像をアーカイブして、私はしばらく休みを取ろうと思う。

Notation of the ᏗᎷᏰᎥᎥᏋᏁᏖ music used for hui emerging at TAU, Sep 10, 2021